こてゆび雑記文庫

こてゆびってオタクの雑記が溜まっていくだけです

深夜に伊那路を18km歩いたときの話

これは飯田線伊那大島行きの写真。天竜峡から飯田を経て伊那大島まで走る正真正銘の最終電車です。f:id:Koteyubi:20200407204544j:plain


写真があるってことは乗ってきました、収録してきました。もちろん終点まで乗りました。

 

終電ってことは当然そこで降ろされて、朝まで戻ることも進むこともできません。

逆方向に飯田行き最終が残っていましたが見ないふりをします。

じゃあここからどうするのか…

 

歩きます。

事前調査

とはいえ流石に何も考えずに歩き続けるのは無謀です。冗談抜きで命にかかわります。なので事前に下調べしてあります。

 

伊那大島から北に歩き続ければ、20kmほど先の伊那福岡駅付近に高速バスの車庫があり、そこから東京方面のバスが早朝から出ているという情報を得たので、今回は伊那大島からそこまで歩こうという決断を下しました。

なんでタクシーとか使わないんだよドMか?という意見が出そうなので言い訳すると、単純に経費を抑えたいのと、深夜の町を歩くのが好きだからです。ドMではないです。(でもどっちかと言われたら多分Mです)

 

とはいえ夜中は見通しも悪いし、同じ場面でも昼より危険度が段違いです。おまけにそんな時間に荷物持って歩いてる人は恐らく不審者扱いされるでしょう。深夜未知の町を歩く時はマイルールの一つとして、大通りを歩くことを基本としています。なぜなら、私の身に何かあった場合、ライトを照らしている自動車やトラックに自分の存在を早く認知してもらいやすくなるという憶測を持っているからです。誰にも知られず野垂れ死ぬくらいなら職質される方が100倍マシです。

しかしそのような大通りだと歩道がない場合が往々にしてあるんですよね。それで車に轢かれてしまったら本末転倒です。そういった事も考慮して、予め地図やストリートビューを駆使して確認してルート選定をします。んでもって大体の所要時間をGoogleで弾き出します。Googleの徒歩に於ける所要時間はオタク歩きくらいの時間なのでまあまあ余裕をもって時間を見積もります。

今回は、県道15号を北上し、飯島駅付近から国道153号線を通るルートにしました。

↓大体こんな感じです

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目標は4時22分発の高速バスに乗ること。予約は発車10分前までできるので、間に合わなかったときのリスクを考えて直前に取ることにしました。

決行

というわけで当日午後11時半に松川町伊那大島駅に降り立った。

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終電終わって「何も無い」から歩くわけですが、歩く道中は「何もない」だけで済むならまだ良いんです。本当に恐いのは「何かいる」ことなんです。

人が居た場合はめちゃめちゃSAN値削られるけど大抵はまあ一瞬の出来事です。人じゃなくて動物がいる場合もあります。動物といってもタヌキやウサギならまだいいですが、シカやイノシシなんか目の前に現れてもし襲われでもしたらひとたまりもないです。深夜徘徊の背徳感はこういう危険と常に隣り合わせなのも理由の一つかもしれない。

23:30 伊那大島駅

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というわけで出発です。マジで夜中に全く宛てのない長野の小さな町に来てしまったという背徳感を全身に浴びながら歩き始める。

写真見たらわかると思いますがこの日は生憎の雨、小さな折り畳み傘でせめて体はできるだけ濡らさないようにしながら歩を進めていく。

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標識の影が重なって人のシルエットに見えてめっちゃビビり散らしたり、道中四方を林に囲まれた道にビビり散らしたりしながら40分ほど経過

0:15 上片桐駅

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この時間はもう電車が終わっているので当然誰もいない。無人駅なのでホームに入ることもできる。長い道のりはまだまだ始まったばかり。 

上片桐駅付近はあまり大きな道が無かったのだが、20分ほど歩いたところで大きめの道に出ることができた*1。とはいえこの時間に走っている車はあんまり多くないので、長距離を走る車はもっと東にある国道*2か中央道を走っているのか?と小さな疑問を持つなどした。道中走る乗用車にハイビ焚かれたりしながらまた20分ほど歩いた。 

次の駅の直前で飯島町に突入。この街を縦断しなければ駒ヶ根には辿り着けぬ…

1:00 高遠原駅

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駅への入り方が分からなくて10分くらい彷徨っていた。そのクセいざ駅に入るとホームがグチョグチョだった。真っ暗なので駅名標写真もろくに撮れない。

近くの踏切の写真とか撮った。夜中の小さな踏切とか結構好きなんですよねー、しかも今回は第四種踏切*3。テンション上がるんだよマジで

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ここらでお腹もすいてきたので事前に買っておいたパンを食べながら歩く。

中まで濡れた靴でひたすら北へ歩き続ける。寄り道すれば七久保駅に行けるのだが、体力を温存したかったので取り止めた。雨降りなので余計な体温を吸われては堪ったもんじゃない。

 

高遠原駅から30分程歩いたところで眩しい光が目に入った。

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コンビニだ!!!!!!!!

1:30 セブンイレブン 飯島七久保

どんな時間でも様々な物品を入手できる現代文明と、そんな時間に労働している人々に最大限の感謝と敬意を表しつつ、食料や飲み物を買い込んだ。あと少々暖を取った。

この先道中にコンビニは更に2,3軒ありましたが買い物したのは結局ココだけでした。

1:45 柏木交差点

コンビニから10分ほど歩くと信号のある交差点に辿り着いた。

この先で川を越えるのだが、直進すると歩道がない橋を渡る羽目になるので、進路を右に変えた。右側へ進むと、川を渡る前にヘアピンカーブが存在し、その脇に階段があるのを航空写真で確認していた。しかし、ストリートビューでは確認できない部分も多く、全ての区間で歩道があるのを確信しているわけではないのでそこは正直博打であった。安全に行ける確信はなかったが、ほかに道はない。引き下がれない。行くしかない。

 

………………

 

…………

 

……

 

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最初は階段の姿が無かった。車はまず通れない細さの道が脇にあったので、ダメ元で真っ暗な坂を下り始める。周りは木々に囲まれ、何も見えない。足元にも前にも左右にも注意を払いつつ、できるだけ早く坂を下り切った。

そこに広がっていたのは砂利の山。公道なのか私道なのかも正直分からない。なので写真も撮ってない。地図アプリで位置関係を確認して、ここもできるだけ早く通り抜けようと北に歩を進めた。

その先は全て近くの階段で通り抜けることができた。とりあえず無事に通り抜けられたが、少なくとも深夜に1人ではもう行かなくていいかな…

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田切交差点

階段を最後まで下りたら再び車道と合流、地下道で交差点を潜り抜けた。午前2時10分、やっとの思いで与田切川を渡ることができた。とりあえず一つの山場を抜けたということで胸をなでおろした。

川を渡ってから更に20分ほど歩くと建物が増えてきて、街の中心部に来たと実感。飯島駅もすぐそこまできていた。

2:25 飯島駅

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つかれた この辺からちゃんと真っ直ぐ歩くことができなくなってきました。微妙に左右にふらつきながら歩道から絶対出ないように休まず足を前に出し続ける。中継地点以外で立ち止まったら終わりな気がした。立ち止まったらもう歩くのが嫌になる気がした。だから歩き続けた。

3:00 田切駅

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駅の手前で転倒しかけた。この体力では一回の転倒も命取りになる気がしてならない。確実に一歩一歩進めることを念頭に歩き続ける。

ところで、駅前の公衆トイレが汲み取り式、所謂ボットン便所でした。水で流れないし、粘度の高い便だと便器に着いたまま残るのではないかと不思議に思っていたのですが、案の定便器にまあまあベットリと付着していました。掃除大変そう。中を覗き込んだら糞尿だけではなく、紙らしきものも結構多く入っていました。ちゃんとボットン便所を見たのは初めてだったので少々観察してしまいました。※閲覧注意:読みたい方は反転表示願います。

3:10頃に中田切橋を渡り、長いこと歩いてきた飯島町に別れを告げる。いよいよ目的地のある駒ヶ根市に突入。

この辺りから段々逆に笑いが出てくるようになりました。夜中の3時に雨の中駒ヶ根を歩く22歳男性、異常そのものである。

 

そういえば…

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途中、道の脇にこんな緑色の箱のような物体を見かけました。初めて見る代物なのでどんな用途なのかサッパリ分かりません。何か知ってる方いたらコメントとかで教えてくださいお願いします。

目的地まであと少し、休まず歩き続ける。

3:40 伊那福岡駅

着いた…………………………!!!!!

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一応の目的地に到達。まずはここまで生きて辿り着いた自分を褒め称えた。

誰もいない待合室に一人座り、光に集う虫と戯れる。腰を落ち着けたのは313系の座席以来。めちゃめちゃ疲れた。雨を凌ぎながら再びパンを貪る。

バス停はここから10分程度歩いた場所にあるので、このタイミングで乗れる一番早いバスの予約をここで取った。(後述するが、流石にその日の朝一の便だった。)

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しかしここでピンチが訪れる…

 

駅から移動しようとした瞬間に強烈な便意に襲われたのである。

そう、完全に失念していたが、この深夜に長距離歩こうとすると、用を足すことができる場所もかなり限られるのである。今回の場合はコンビニや前述した田切駅前のトイレくらいしか尊厳を維持できるような場所は無いのである。しかし、そこを歩いていた時は全くと言っていいほど催してなかったゆえ、問題にしようともしていなかった。

このままではマズイ。タダでさえ雨でビショ濡れなのに更に糞尿垂れ流し状態となったらバスに乗って帰るどころの身体ではないのは容易に想像がつくであろう。しかも着替えの入ったバッグはもっと濡れていたので代わりに着れるような代物も手元には存在しない。つまり…

 

漏らしたら詰みである。

 

幸いにも門を叩く客はお腹に痛覚で訴えかける者ではなかったため、とりあえず焦りながらもある程度の余裕を持つことができた。しかし油断は禁物である。とにかくバスの待合所に行けばトイレがあると目論み、そっちに向かって歩き続ける。*4

10分程で着くような場所なので「大丈夫だ…大丈夫だ…」と呼びかけながら歩いた。

4:00 伊那バス 駒ヶ根営業所

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さあ待合室に行けばトイレがあるはず…!!!すぐさま引き戸を開け中を見渡す。

 

「………!?」

 

「無い………!?」

まさかそんな馬鹿な、バスの待合所、しかも車庫である。トイレが無いはずない。

しかし朝早すぎるのか待合室に従業員含め人の姿はない。人に尋ねることもできない。

 

「外か………?」

正直歩いていた時よりも焦りを感じている私は見落とした可能性を探った。外に出て探す。しかし他に周りに人の入れそうな場所が見当たらない。どこかに案内サインでもないものか…?

 

「奥だ………!!!」

外にピクトグラムを発見した!外はまだ暗く光に照らされていないため見つけるまで少々時間がかかってしまった。案内通りに待合室よりも更に奥に車庫を歩み進めると確かにそこには尊厳堂が存在していた。私は勝利したのだ。あと思ってたよりきれいなトイレでウォシュレットまで積んであったので万歳三唱した。

 

4:22 伊那バス 新宿行き高速便

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と、いうわけで無事(伊那の山道と)(尊厳の危機から)生還した私は、4:22発のバスに乗り、新宿へ無事向かうことができた。

靴の中が無限にグチョグチョで不快だったので車内では終始靴と靴下を脱いでいた記憶がある。先述の通り鞄の衣類も全部びしょぬれだったので、初便なのに自分の周りだけやたら濡れてしまった気がして申し訳ない気持ちになった。

余談ですが、この時乗ったバスの人数は私含め7人でした。駒ヶ根車庫で乗ったのは私1人、伊那ICで3人、中央道箕輪BSで3人という具合でした。この辺りは近くの駅から乗ってくる人より、パークアンドライドでバス停の近くに車を止める人が多いのでしょうか?

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双葉SAで停車中の23182号車

この先はトラブルもなく、朝の8時には新宿に到着できました。こんな朝早い時間から運転しているなんて本当にお疲れ様です。それと深夜徘徊で不審に思われた伊那の住民の方々居たらごめんなさい。この後京急線で人身があり、仕方なく磯子からバスで帰ろうとしたら、振替客の混雑で疲弊した体に鞭打たれてキレ散らかしたのはまた別のお話。

おわりに

今回は怪我やトラブルもなく無事に帰れましたし、職質も受けませんでした。

けど今回無事だからと言って次回も何事もなく行けるとは限らないので、また別の場所を歩く時は入念に下調べするつもりです。今回の反省点はトイレの位置を把握していなかったことですから、次回以降はトイレも調べることにします。

以上が終電収録のために、伊那路を18km歩いてでも帰宅しようとした男の一幕でした。

では。

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*1:先述した県道15号である。

*2:天竜川沿いを走るが、飯島駅以南は途中で歩道が途切れるので今回はルートに採用しなかった。

*3:警報機(赤く光ったり音鳴ったりするやつ)や遮断機が設置されてない踏切のこと

*4:伊那福岡駅前にも公衆トイレがあるのだが、当時は焦っていたのか気づかなかった。