おはようこんにちはこんばんはこてゆびです。
去る2021年6月9日。私、もとい我々は一本の動画を投稿しました。
素材は伊豆箱根鉄道の「ホロ伊豆ム」ラッピング電車。
曲は「吹 っ 切 れ た」でおなじみおちゃめ機能です。
と言うのは簡単ですが、この動画は私一人で作ったものではありません。投稿アカウントこそ私ですが、私自身が作ったのは音合わせドラムと後半の下車パートのみです。
この動画は発案者であるムネパン氏のほか、多くの方々のご協力により完成した動画となっております。
そもそも「ホロ伊豆ム」とは
Vtuberグループの「ホロライブ」と、静岡県を走る電車、「伊豆箱根鉄道」、旅行会社でおなじみ「近畿日本ツーリスト」がコラボした企画であり、限定グッズ販売、ラッピング電車、限定旅行プランなど、ファンがホロメン*1との伊豆旅行を楽しめる企画で、今年6月9日まで開催されていました。
この動画はその企画の最終日、つまりラッピング電車の最終日となった6月9日に、この「ホロ伊豆ム」という企画、ラッピング電車が走ったという事実を少しでも形に残そうとして制作、投稿された動画になります。
この動画の詳しい制作経緯などに関しては発案者であるムネパン氏の記事をご覧いただければと思います。
この動画の大雑把な説明は以上として、ここからは私視点で動画の制作経緯やメイキング的な内容になります。
制作に至るまで
鉄道、音MAD、Vtuber。この三つは近年の私の趣味を構成する大きな要素たちであります。
半年前Vtuberと鉄道が実際にコラボした企画が催されました。
それが先述した「ホロ伊豆ム」です。
で、鉄オタである私はその中でも「ラッピング電車」に目を惹かれ、以前から興味を持っていた鉄道ということもあり実際に2月頃行ってきました。その時のことは過去記事に書いてあるのでそっちを読んでくれたらと思います。
んで、一応音MAD作者でもある私は必ずしも「ホロ伊豆ム」には縛らずとも、その電車を登場させた下車*2を制作したいなあという気持ちが漠然ながらもありました。といっても、曲が全然思いつかんもんでなんだかんだ言いながらお蔵入りになる気がしていました。
転機が訪れたのは4月です。先述したムネパン氏から動画のお誘いを受けたのです。彼は以前、私個人の下車を制作する際に写真を提供いただいた方です。今回はホロ伊豆ム電車を確かな記録として残したい先方と、ホロ伊豆ムで下車を作りたい私との思惑が一致した形で合作が実現しました。
それから、以前私個人の下車を制作していた際、彼には大変多くの素材を提供いただいたご恩があり、当時の恩返しもしたいという気持ちが個人的にはありました。
というわけで6月の投稿を目指し制作に取り掛かったわけです。
制作過程
私が担当したのは全体の音合わせと、後半の動画です。後半は下車、もとい音MADパートになります。全体の音量調整等を先方に早いうちに投げておきたかったので、まずは音合わせから始めました。
そうじゃなくても音MADというのは「まず音声があってこその動画」という意識が強いので、私は音声を先に作ります。まあ大多数の音MAD作者はそうだと思うけど。
音合わせをします
今回はおちゃめ機能という曲、それにおける既存下車動画の構成、作品全体で見たときに音MADであるパートが少ないこと、それから動画に重きを置きたい面があったので、それぞれの音はあまり強すぎないようにしたつもりです。ドラムとかがあんま強すぎて騒がしい印象を持たせる部分ではないかなーと思ったので。(普段とそんな変わってなかったらゴメン)
使った音
以上四種類です。あんま増やしすぎるものでもないかなーと思い今回はこれくらい。
こいつらをリズムよく置いたりピッチ合わせしたりして、あんま時間かからず完成しました。
編集画面はこんな感じ。上から順に原曲、メロディ、ベース、ドラム1、ドラム2の順に置いてます。
セリフ合わせをします
後半、具体的には曲のサビから最後までが下車パートです。セリフも動画も私が作る部分です。
私が今回軸にしたのは、伊豆旅行にやってきたホロライブファン含めた観光客の目線です。三島から修善寺へ向かう人の目線、すなわち修善寺へ行く列車を採用しました。なぜなら私自身がその立場であるからです。
電車に乗ったらどんな放送が流れるのか、どこにどんな風景が広がっているのか、目的地はどんな場所なのか。
「さあ三島駅までやってきました。そこに止まっていたのは普段YouTubeで配信している女の子たちのラッピングが施された電車です。車内までホロライブがジャックしています。この列車に乗って私は修善寺へ向かうのです。」
説明が長くなりましたが、要は下り列車を軸に作りました。具体的には、三島から修善寺まで車内放送を喋らせて、アウトロの部分で修善寺駅の到着放送を入れるといった構成にしました。
これ自体はすぐ頭に浮かんだのですが、尺の配分は毎回どうしようか悩みどころです。
読み飛ばしてもいいゾーン
小難しい話になるかもしれませんが、音楽というのは4小節で1フレーズというか、歯切れがよくなるというか、そういう傾向にあります。おちゃめ機能の歌詞を思い出していただきたい。
いつでも I love you 君に Take kiss me 忘れられないから 僕の大事なメモリー
これで4小節使っています。ちょうど1フレーズになっています。この4小節に丁度良く駅が収まるように、欲を言えば主要駅の手前や直後でフレーズの境目になるなど、鉄道側の歯切れも良くしたいわけです。西武線の下車で例えるなら、サビの手前で主要駅である所沢まで各駅停車で着実にセリフを合わせてって、サビに入ったら通過駅をぶっ飛ばしながら疾走感あるセリフ合わせで盛り上げたい、見たいな感じ。伝われ。伝わってなかったらゴメン。
上手く言えないけどこういうことを念頭に置いてセリフ合わせをしています。
ここからまた難しくないかもしれない話ゾーン
今回は踊り子号*4の停車駅を主要駅とみなして、伊豆長岡や修善寺なんかは目立たせるように尺を長めにとるとか、逆に市街地の「三島○○」と連続する駅は長すぎるとくどいのでそれぞれアッサリめの尺にしたり…そんなことを考えました。
それから今作に限った話ではないんですけど、同じ声の放送が続くとメリハリがなく飽きやすいので、途中で英語放送や接近放送を挟むとか、刻んだセリフを左右に振るなどしてある程度抑揚をつけているつもりです。
見た目はこんな感じ、上から二段目と(下半分が緑色の段を除いて)三段目がセリフです。普段はセリフの方が楽に作れるんですが、今回はメロディの音合わせが難しくないのもあって、セリフ合わせの方が難産でした。
動画を作ります
音ができたら動画です。
今回はホロ伊豆ム電車のMADなので、ホロ伊豆ム電車が写ってないフレームがほぼ無いくらいのつもりで作りました。
実は動画のためにもう一度ホロ電の取材に出向いたんですが、その結果全駅で修善寺行きのホロ電の動画を撮影することに成功しました。そもそも素材が少なかったのもそうだけど、三島行きの電車で妥協したくなかったのが強いです。なぜなら私が乗っているのは修善寺行きだから。三島駅を経て今から修善寺観光に行く人が三島行きの電車に乗りますか?乗らないでしょう。あまり時間と金が無かったのもあり二回目の取材は日帰りで済ませてきました。いま神奈川住みでヨカッタ…
取材を終えて早速制作に取り掛かります。
構成としては、各駅の動画を出しながら駅名を文字で出すのが主です。
ホロライブのロゴに似た三角形を文字の横に配置して、ホロライブの色味に合わせました。
こんな感じです。
右上の文字と図形のやつどうやって作ってるんだ?
というお話をします。
まあ一言で言うと
図形と文字をそれっぽく配置して終わり!
なんですけど、流石に雑過ぎるのでもうちょい細かく書いていきます。
その図形と文字のみを配置したものがこちらです。
図形は四角形1つと三角形2つ、文字は日本語と英語の2種類を用意しました。
編集のタイムラインはこんな感じです。上から順に説明していきます。
レイヤー1
非表示にしてある、すなわち画面に映らないので省略します。
レイヤー2
直線を配置しています。薄水色の長方形にあたります。
大きさと色と場所を指定して終わりです。
色はこの図形含めて全てホロライブのロゴのカラーから抽出しています。色だけならいくら引っ張り出しても著作権の侵害にはなりません。
レイヤー3
日本語の文字を配置しています。
「三島○○」「伊豆○○」という駅が多くくどいので、「三島」と「伊豆」の文字はやや小さくしてあります。文字の大きさは、一つのレイヤー(オブジェクト)でそれぞれ変更することができます。
<s120>というのが「文字の大きさを120にする」というコマンドです。
その後ろの<s>は「文字の大きさを元通りにする」というコマンドです。元通りの大きさというのは、上のパラメータの「サイズ」項目で設定した値です。今回は150になっています。
その他、画像下部の「アニメーション効果」で文字の間隔を広げたり、色調補正、シャドーで多少エフェクトをかけています。
レイヤー4
三角形2個を配置しています。
AviUtlデフォルトだと、角が丸い三角形は用意できないので有志によるスクリプトを使用しています。
使用するのは「角丸正多角形」です。ゆうき氏配布のスクリプトだったと思うのですが、執筆時に配布先を探したところ見当たりませんでした。
「頂点数」で頂点の数を決めます。3つにすれば三角形、4つにすれば四角形、5,6,7…とどんどん増やせます。そしたら「角度」を90度に設定して右向きにします。「丸み」をつけると角が丸くなります、ただし丸みをつけすぎるとただの円になってしまうので数値は控えめに。
その後は「領域拡張」で空白エリアの幅を作ります。これを施すと、その下にある「画像ループ」で画像を増殖させた際に、オブジェクト間の幅を調整することができます。
レイヤー5
英語字幕です。こちらは文字によっての大きさを変えることはせず、全て同じ大きさで配置しています。文字間隔等も日本語文字同様に調整します。
こいつらを全て組み合わせると先程の画像のようになります。
これを動画と組み合わせて完成、というわけです。
これを全駅分繰り返して大体は終わりです。
他にももうちょい弄った部分はあるんですけど書く気力があんま残ってないので勘弁してやってください。気が向いたら追記するかも(多分しない)。
投稿当日の話
投稿前日の深夜には私も制作を終えており、当日は予約投稿を待つくらいの状態でした。しかしこの日我々は衝撃の報せを受けました。
ライバーの一人「桐生ココ」の卒業です。
よりによって投稿当日にこのような知らせを受けるとは思ってもいませんでした。勝手に二次創作してる分際で言うのもアレですが、動画投稿者視点で見るに投稿のタイミングとしては最悪です。なぜならホロライブの話題は会長*5の話題で持ち切りになります。その辺のオタクが作った二次創作に目を向けている暇なんぞありません。多くのファンは残り少ない会長との時間をどう過ごすか、会長のために何ができるかを考えるでしょう。
まあそれだけならまだいいです。しかし話題になっているのはただでさえ頻繁に炎上している(失礼)ホロライブです。一人の卒業がどこまで影響するかは分かりませんが、あらぬ憶測がこちらにも飛び火したら一個人としては申し訳ないが堪ったものではないです。
だからといって、我々が記録してきたものが消えるわけではありません。制作してきた労力が水の泡になるわけではありません。
時間は戻せませんが、今の瞬間を未来に残すことはできます。
飛び火を喰らう恐れが無きにしも非ず、他のホロリスナー*6からは見向きもされないかもしれない、それでも投稿日時を変更するつもりはありませんでした。
なぜなら、私も会長のために、ホロ伊豆ムのために何ができるかを考えたとき、その動画を予定通りに投稿することがせめてものはなむけだとおもったからです。
一人の卒業を「その程度」というのは失礼ですが、そのような事象で軸がブレるほどの生半可な気持ちで動画を作ってきたわけじゃありません。
桐生ココ会長は確かにホロライブにいた、ホロメンを纏った電車が伊豆を走った、その「今の瞬間」を捕らえた記録の数々が、確かにこの動画には残っています。
制作を終えて
長々と書きましたが、今思えば一つの編成を追いかけて撮影したのは初めてかもしれません。まさか西武でも京急でもなく、いずっぱこでこんなことをするとは思ってなかったです。
伊豆箱根鉄道で何か下車を作りたいという漠然とした願望も叶ったし、ホロライブ電車を下車に出す機会も作ることができて私としては満足しております。またどこかでVtuberのラッピング電車が走る日が来たら追いかけるかもしれません。
一方で、私もこの動画を作らなければ、6月9日を「そうか今日が最終日か、へえ~…」くらいしか思わなかったでしょう。ですが人の熱意に人間は動かされるのです。その熱意を踏まえて追加で取材したり、動画制作に時間を割いたりすることで自然と私もその動画に思い入れが生まれるわけです。
願わくば、この列車が走ったことを少しでも覚えてくれたり、この動画を見て思い出したりしてくれたらと思います。
改めて、制作に携わったすべての方々、ホロライブさん、伊豆箱根鉄道さん、そして動画を見てくれた方々に感謝をしつつこの辺で筆を置こうと思います。
では。