こてゆび雑記文庫

こてゆびってオタクの雑記が溜まっていくだけです

西武の新しい駅放送を理解したい

おはようこんにちはこんばんはこてゆびです。

去る2023年9月10日、ついに西武線の運行管理システム(SEMTRAC)が池袋線で更新されました。

www.seiburailway.jp

今年度の更新が西武の鉄道事業設備投資計画で発表されていた*1のですが、これに伴って駅放送も一新されました

先述のリンク先に記載されている通り、9月10日にシステムを切り替え、同月16日から本運用を開始したとのこと。

10月には山口線も本システムに組み込まれることが発表されており、駅放送の去就が気になるところです。

 

人の投稿で失礼します。

 

ネットに上がってるのを聞いた私は

「岡山や静岡っぽい?」

という感想でした。

合成放送になったのは残念だけど、合成にしては全然悪くないんじゃないかなあとは思います。今はまだ違和感あるけど、しばらくしたら馴染むんじゃないかな。

 

まあ俺の感想はさておき、今回は従来の放送と比較して共通点や変わった点なんか掘り下げていきたいなーと考えています。

更新されて間もないので私が把握してる情報はかなり少ないですが、ちょっとばかし収録したりネットの海を泳いだりしたので自分用にまとめたい記事です。今後収録したい方も参考にしたりしなかったりしてください。

SEMTRACの放送について

西武の運行管理システム、SEMTRACはSeibu Multiple Traffic Control systemの略で*2、コンピュータ制御で列車の運行情報を管理しています。制御装置は池袋線系統(池袋線西武秩父線西武有楽町線豊島線狭山線)新宿線系統(新宿線拝島線国分寺線西武園線多摩湖線)に二分されており、今回更新されたのは池袋線系統です。このシステムは本更新で3代目となります。

 

注意:本記事ではこの先、各時期に使用されていたシステムを「初代」「2代目」「3代目」と呼称しますが、これらは執筆者個人が便宜上用いている独自の呼称です。本記事以外でこの単語を使用しても通用しません。

 

最初にざっと変遷を書いていきます。ただし声優については詳しくないので鵜呑みにしないでください。

初代(1992-2006)

初代は1992年4月1日に稼働を始めました。

旧放送としてYouTubeに上がってるものは初代放送です。

youtu.be

初代放送が鳴っていた頃の私はまだ音鉄という概念も知らないガキンチョだったので、人様の動画で勘弁してください。

担当声優

女声:横田敦子さん

男声:中村健治さん→安富史郎さん?

中村さんはかつて大阪市営地下鉄の駅放送も担当していたようです。しかし彼はSEMTRAC稼働後間もなく病に斃れてしまい、追加パーツ*3は別の方が担当しています。(安富史郎さんが有力らしい)

 

恐らく基本的な文面は以下の通りです。

まもなく N番ホームに (種別) (行先)行きが X両編成で まいります。黄色い線の内側でお待ちください。

(上記繰り返し)

(ある場合は付帯放送)

(優等の場合は次の停車駅を案内)この駅を出ますと、○○まで とまりません。

 

2代目(2005-2024?)

2代目は2005年7月2日に池袋線で、2006年9月24日に新宿線で稼働しました。

皆さんが聞き慣れている放送はこれです。

youtu.be

新宿線はまだこの放送が現役ですが時間の問題でしょう。前回の更新を見るに来年度じゃないかな多分。

担当声優

女声:豊田真由美さん→羽鳥美由希さん

男声:鈴木盛久さん

豊田さんはかつて銀座線の駅放送も担当していました。ただ、少なくとも2013年改正の時点で新規パーツは羽鳥さん収録になっているかと。羽鳥さんは数年前まで有楽町線副都心線の接近放送でも聞くことができました。

鈴木さんは東横線北総線の駅放送を現在も担当しています。

 

基本的な文面は以下の通りです。

まもなく N番ホームに (種別) (行先)行きが X両編成で まいります。黄色い線の内側でお待ちください。

(上記繰り返し)

(ある場合は付帯放送)

(優等の場合は次の停車駅を案内)この駅を出ますと、次は ○○に とまります。

 

この放送については別記事で少し解説してる(つもりです)ので、こっちも併せて読んでみてください。

koteyubi.hatenablog.com

 

3代目(2023-)

んで、今回の更新で3代目が稼働しました。

youtu.be

今回は合成音声と言われており、私と同様に岡山CTCや静岡NOAに似ているという感想を抱いた方は多いようです。ていうか同じかもしれません。

というのも、SEMTRACは三菱電機*4なのですが、JR西日本の岡山地区で採用されている運行管理システムも同じ三菱電機製であり、そこの案内放送は同社が開発した合成音声を使用しています*5。とすると、同じ三菱電機製であるSEMTRACに同様の放送が導入されても不思議ではないんじゃないかな?と思うわけです。偶然にも執筆中にこの情報を出してくれたフォロワーさんがいたのでこの場を借りてお礼申し上げます。

担当声優

日本語:男女とも合成?

英語:???

今回特筆すべき点は、英語放送が追加されたことです。ただ英語放送は誰が担当しているかは私の力ではまだ調べきれません。ごめん。なんとなく女声の方はラビュー*6の英語放送に似てるなあと思ったけど、どうなんでしょう?

 

3代目SEMTRAC放送概説

本題はここからです。新たに導入された放送を理解しないと満足に収録も出来ません。自分で記事にまとめて理解する意味も含めてここに色々書いていこうと思います。

例として、先程の動画の接近放送を書き起こします。

まずは上り、急行 池袋ゆきの接近放送です。

まもなく 2番ホームに 快速 渋谷・横浜方面 元町・中華街行きが 10両編成でまいります。
黄色い点字ブロックの内側で お待ちください。

The rapid train bound for Motomachi-Chukagai is arriving at track 2.

This train consists of 10 cars.

Please stand behind the yellow warning blocks.

この電車は 途中 練馬で 各駅停車 池袋行きに お乗り継ぎができます。

この電車は 副都心線内では 急行に なります。

この電車は、ひばりヶ丘までの各駅と、石神井公園、練馬、新桜台小竹向原に とまります。

次に、各駅停車所沢行きの接近放送です。

まもなく 3番ホームに 各駅停車 所沢行きが 10両編成でまいります。
黄色い点字ブロックの内側で お待ちください。

The local train bound for Tokorozawa is arriving at track 3.
This train consists of 10 cars.
Please stand behind the yellow warning blocks.

この電車は 終点 所沢で、各駅停車 飯能行きに お乗り継ぎができます。

 

つまり、一般化するとこうなるだろうと推測できます。

まもなく N番ホームに (種別) (行先)行きが X両編成で まいります。黄色い点字ブロックの内側でお待ちください。

The (種別) train bound for (行先) is arriving at track N. This train consists of X cars. Please stand behind the yellow warning blocks.

(ある場合は付帯放送)

(優等の場合は停車駅案内)この電車は、○○までの各駅と、▲▲、◇◇、▼▼にとまります。

基本的な放送の構成や放送順序は以前とほとんど変わらないように思います。文面もよく似ています。

また、上りが女声、下りが男声という点も変化していません。

以前(2代目)と比較して変化した点をいくつか挙げていきます。

黄色い線→黄色い点字ブロック

まず、「黄色い線」から「黄色い点字ブロックという表現に変わったことです。

近年多くの事業者で、接近放送では「白線」や「黄色い線」から「黄色い点字ブロック」という表現に変わりつつあります。西武もそれに倣った形と思えばこの変化は自然だと思います。

英語放送の追加

次に英語放送の追加です。JRをはじめ英語での接近放送を導入する事業者も増えています。グローバル化の進む現代です。これも十分予想された範囲だと思います。

これに伴い、今まで2回流れていた日本語の接近放送は1回に減っています。まあ現状に加えて日本語放送をもう1回流してたら、放送が流れきる前に電車が来てしまうでしょうから、これも妥当でしょう。(今までも付帯流れ切らないことはザラでしたが)

停車駅案内がより詳しく

それから停車駅案内がより詳しくなりました。今までの場合は

「この駅を出ますと、次は○○にとまります」

と次の停車駅のみを流していましたが、この放送では

「この電車は、○○までの各駅と、▲▲、◇◇、▼▼にとまります」

といった、この先全て(地下鉄直通の場合は小竹向原まで)の停車駅を流しています。

これは有難いんじゃない?次にとまる駅だけ分かってても降りたい駅に止まるか分からなきゃ意味ないですからね。

これについては後半にもう少し詳しく書こうと思います。

付帯が最後まで流れる

これが衝撃的でした。従来の放送では、電車が駅に入線するとそれ以降の放送はカットされてしまい流れませんでした。しかし、上記の快速元町・中華街行きの放送を聞くと分かりますが、電車が既に入線してきている音がはっきり聞こえるにもかかわらず、停車駅案内を最後まで流しています。

 

Q.停車駅案内以降に流れる放送はカットされたんじゃないの?
A.従来の放送では、停車駅案内もとい次の停車駅が流れる順序は、付帯放送の中でも一番最後でした。この順序を踏襲していることを考えると、最後まで流れ切っていると考えるのが筋だと思います。

 

通過電車や回送について

通過電車や回送の接近放送についてはこちら。

自前素材じゃなくてすいません。回送の接近放送をまだ録ってないもので…

こちらも基本的な文面は変わらないまま更新され、黄色い線→黄色い点字ブロック、英語放送追加&日本語放送1回となっているようです。

細かい部分を述べると、「危ないですから」というアナウンスが、初代SEMTRAC以来の復活となっています*7

それからもう一つ

この動画を見ていただきたい。

youtu.be

遅延時の放送がある

なんと今回の放送、電車が遅れたときにはその旨を知らせる放送が流れるようです。

このような放送は今まで聴いたことがありません。すごい。西武じゃないみたいだあ…。

最初にリンクを貼ったプレスリリースの通り、3分~10分の遅延があった際はこの放送が流れるようです。

放送の流れるタイミングは、「本来の予定時刻」「予定時刻+5分」のタイミングで流れるものと推測します。私が現地で収録した際の感覚なので間違ってたらゴメン。

 


 

なんというか、収録するのが楽になったのやら大変になったのやら、よく分かりませんな…。

 

注意点

新放送になって、注意しなきゃいけないポイントも新たに出てきたので、そこをまとめようと思います。

放送は1回しか流れない

先述しましたが、英語放送が追加されたことに伴い、日本語の接近放送が流れる回数は従来の2回から1回に減りました。日本語と英語が1回ずつ流れて、その後に付帯放送という流れです。

今までは、「流れ始めてから構えればいいや~」なんて呑気なこと言ってましたが、そうもいかなくなりました。ちゃんと事前に構えておきましょう。駅のホームで余裕ぶっこいてヘラヘラしててもいいですが、泣きを見るのは貴方です。

英語の音量がデカい

これは収録してて思った&西武音鉄が口々に述べていましたが、どの駅でも日本語放送より英語放送の方が音量がデカいです。

私は安物のレコーダーしか持ってないんで詳しくない*8ですが、録音レベルを日本語放送の方に合わせると、英語放送がバリバリに割れちゃうなんていう目に遭うかもしれません。お気をつけて…。

池袋は冒頭が欠ける

何故か分かりませんが、放送が更新されてから池袋駅の放送は冒頭が欠けてしまいます。

「(まもなく、3b)aんホームに、準急 所沢行きが…」とか「(この電車は、)練馬、石神井公園…」のように(括弧内)の部分がなぜか流れないのです。池袋で放送を狙う方は注意。

 

2023/12/5追記:現在、池袋駅の放送は冒頭から欠けずに流れます。2023年12月3日および4日に現地で確認しました。

 

もうちょっと深堀り

ここまでは以前の放送との違いを主な着眼点として述べましたが、ここからはもっと放送内容やその他気になる部分を深堀りしていこうと思います。

ものの1ヶ月で何もかも分かるわけじゃないんですが、少しでも早く疑問を解決したかったので、ネットの海を泳いだり自分で収録してきた*9ものを参考にしながら調べました。

停車駅案内について

まずは大幅に放送内容が変わった「停車駅案内」についてです。

youtu.be

この項で述べたい内容はこちらの動画にまとめてあります。

上りの場合

動画の0:00~をご覧ください。

上り電車でよくある、途中から通過運転をする種別の場合です。

これは先述しましたが、

「この電車は、○○までの各駅と、▲▲、◇◇、▼▼にとまります」

というアナウンスでした。

 

下りの場合

動画の0:47~をご覧ください。

下り電車でよくある、途中から各駅にとまる種別の場合です。

「この電車は、◇◇、▲▲、○○、○○から各駅にとまります」

というアナウンスになります。

「次は終点」という文言

動画の1:30~をご覧ください。

次駅が終点の場合は、「次は終点、▼▼にとまります」というアナウンスに変わります。

まあ「この電車は、▼▼にとまります」でも日本語として崩壊はしないですがコレジャナイ感は否めません。練馬や石神井公園入間市では割と聞けるんじゃないかと思います。

「○○までの各駅と」と流れる範囲

動画の2:09~をご覧ください。

各停区間末端の隣駅のみ放送が微妙に異なるようで、「この電車は、○○、▲▲、◇◇、▼▼にとまります」と流れるようです。

上り急行の接近放送の場合、小手指では

「この電車は、所沢までの各駅と、ひばりヶ丘石神井公園、池袋にとまります」

でしたが、西所沢では

「この電車は、所沢、ひばりヶ丘石神井公園、池袋にとまります」

と流れました。

「この駅を出ますと」は生きている

動画の2:53~をご覧ください。

かつての停車駅案内といえば、「この駅を出ますと、次は、○○にとまります」というアナウンスでした。この放送は放送更新で消えたかに思われましたが……

「この駅を出ますと、次は、入間市にとまります」

という放送が確認できました。おそらく、特急とS-TRAINといった有料列車の接近放送で流れるものと思われます。

余談ですが、これら有料列車の付帯放送には特段変化がなく、拝島ライナーにあるような全席指定といった文言も流れませんでした。

しっかり臨時停車も対応

動画の3:35~をご覧ください。

特急の臨時停車にも対応しているようです。先日あった高麗臨*10に合わせて収録に向かいました。

しっかりと「次は高麗にとまります」とちゃんと流れました。この点も変わっていないようです。

他エリアの放送について

さて、今までこの一般的な放送が流れていたエリアは当然更新されているわけですが、同じSEMTRACの範囲内でも、駅によっては異なる放送が流れている駅やホームがありました。そこらへんの現況もちょっと調べました。

秩父エリアは変わらず

池袋線の高麗以西は本線とは異なる簡易放送を使用しています。しかし池袋線系統の更新ですから、範囲としては当然ここも含まれます。どうなってしまうのか気になっていました。

調べたら横瀬西武秩父の放送がうpされていました。どうやらこちらはまだ残存しているようです。

池袋1番ホームも継続

実は、池袋駅の1番ホームだけ数年前から声優が異なるのです。これも調べたらうpしている方がいました。この放送は9月10日現在も使われているようです。

 

 

 

現状調査しきれていない疑問点はこちらになります。

Q.臨時電車の接近は回送と同じ?

52席*11等の臨時電車は今までだと回送と同じ接近放送が流れていました。今回もそれは変わらないのでしょうか?

Q.新桜台に付帯はある?

新桜台駅はなぜか今まで全く付帯放送がありませんでした。練馬駅で優等に接続する場合も何も案内がありませんでした。(※私自身が新桜台にほぼ行ってないので思い違いだったらすいません。)更新されて新桜台に付帯は追加されたのでしょうか?

Q.終電車の付帯は副都心線系統にもある?

従来の放送では終電車の案内をする便は西武線内と新木場行きだけでした。副都心線直通の便は終電車でもそれを案内する放送はありませんでした*12

 

まとめ

長ったらしい文章でウダウダ言ってきましたが、

  • 英語放送増えた
  • 停車駅案内する
  • 遅延放送がある

の3点に加え、ポイントとして

  • 英語の音量がデカい
  • 付帯が最後まで流れる
  • 若干言い回しが変わった

を頭に入れておくと、収録する際にてんやわんやしにくくなるんじゃないかと思います。集めたい人はがんばってくれ。

10年弱の時間をかけて放送を収集してきた私も、またゼロからの再出発です。地道に頑張って集めようと思います。

長くなりましたが今回はこの辺で。

では。

 


*1:

www.seiburailway.jp

*2:

www.seiburailway.jp

*3:練馬高野台行きが」や「黄色い線の内側でお待ちください」など

*4:1991年の三菱電機技報にSEMTRACに関する記述があるらしい。

*5:三菱電機技報 Vol.91 No.1 2017 ※PDF注意。13ページ参照。

*6:池袋線で走る特急電車のこと。

*7:2代目にも文面自体は存在するが、通常は流れない。

*8:音MADで使えればいいので、BGMで誤魔化せる程度のノイズは気にしていない。

*9:たまたま直近で野球観戦の予定があったのでついでに取材してきた。

*10:毎年9月頃に、特急が高麗に臨時停車し、高麗発着の各停も運行される。

*11:西武の観光電車のこと。正式名称は「西武旅するレストラン 52席の至福」。

*12:例として、元住吉行きは東横線内および練馬→小竹向原の終電であるが、付帯はない。