旅に出たい
旅行というより、放浪したい。
目的もなく列車を乗り継ぎ、ふと思い立った駅で降りて、意味もなく歩き続けて、またどこかへ向かう。
昼じゃなくてもいい。夜でもいい。
見たことのない暗闇を掻き分けて、日が昇るまで歩くのもいい。
何がしたいというものが無いわけではないが、明確にあるとも言い難い。
***
本当なら、今年の夏はあつくなるはずだった。
本当なら今頃は、夜の東京を縦横無尽に奔走しているはずだった。
このあついあつい街の、束の間の静寂を浴びるはずだった。
それがままならない今、私はどうすれば良いのだ。
***
何をするべきか、何をしたいのか、何もしたくないのか、それすらわからない。
自分のことを一番よくわかるはずの私が、なぜ己を理解できないのか。
誰かに問うても答えは出ない。我に問うても答えは出ない。
そんなことが分かるなら考えないことだ。でも
考えない方法がわからない。